レッドソックス

スポーツには精神論が口を挟む余地がまだ残っていたようだ。
昨日のヤンキースレッドソックスの試合。
ワールドシリーズ出場に王手をかけたヤンキースの前に立ちはだかったのは37歳のシリング投手だった。
シリングは足首の靱帯一部断絶で今期絶望と見られていたが、
前日に手術を行い、無謀としか思えない状態で登板してきたのだ。
チームのトレードマークである赤いソックスの、わずかに残った白い部分が回を重ねるごとに血で赤く染められていく。
激痛のはずだが気迫の投球を続け、7回を1失点で切り抜けた。
試合は4対2でレッドソックスの勝利。
そしてこういう勝利にチームは勢いづく。
今日の試合もレッドソックスが圧倒し、
3連敗からの4連勝で、遂にワールドシリーズ出場が決まったのだ。

しかし選手生命の終わりというリスクを代償にしてまでシリングが手に入れたいのは、
ワールドチャンピオンという夢だけなのだろうか。
そこにロジャー・クレメンスという41歳の偉大な投手が関係していないだろうか。
かつて2流ノーコンピッチャーだったシリングを生まれ変わらせたのは、
当時すでに大投手であったクレメンスの助言であった。
シリングは、ワールドシリーズというメジャーの、つまり野球の最高のステージで、
恩師であるクレメンスと投げ合いたいのではないだろうか。

レッドソックスワールドシリーズで戦うのは、3勝3敗で並んでいるカージナルスアストロズのいずれかで、明日の試合の勝者ということになる。
ワールドシリーズ出場をかけたその大一番、アストロズの先発はクレメンス。
できればアストロズに勝ってほしい。
野球を観る者の、そしてシリングの夢であるかもしれない対決の実現のために。